おいでやす

京料理、和食をリード

『政府がユネスコに無形文化遺産として提案していた「和食 日本人の伝統的な食文化」が新規登録される見通しになった。正式登録は12月上旬となる見込み。京都の料理界では京料理の発展と地域振興への期待が高まっている。2011年、日本料理の普及に取り組むNPO法人、日本料理アカデミー(京都市)が京都府に提案への要望を働き掛けた。日本の食文化をリードする京料理の進化には「京都特有の歴史的な背景がある」と京料理店「なかむら」の中村元計主人は指摘する。宮中料理が一般に広がった千枚漬け。仏教の戒律が生んだ精進料理や豆腐料理。海から遠い土地で魚料理を求めたことから発展したハモ料理の技術。先人は知恵を注いで新たな料理を生み、技を磨いていった。革新性は今も受け継がれる。

 

アカデミーで中村さんらは大学と組んで和食の可能性を学術的に研究する「日本料理ラボラトリープロジェクト」に参加。うまみ成分の科学的な分析や気候が食材の味や生育に与える影響などを学び、次なる進化のヒントを探す。京都吉兆の徳岡邦夫主人は「グルーバルな視点を持つ農業生産者と組み、和食財の輸出を支援したい」と話す。意欲のある若い生産者は京都府内に多く、環太平洋経済連携協定(TPP)にも前向きという。京都府や京都市は料理界と協力して登録機運を盛り上げてきた。府教育委員会は今年3月、「京料理・会席料理」を府の無形文化財に指定。和食文化を総合的に学ぶ高等教育機関の設置構想も年内にまとまる見込みだ。京都市教育委員長も「京都をつなぐ無形文化遺産」の制度を創設し、第1号に京都の食文化の登録を正式決定した。無形文化遺産の登録で関係者の期待は高まるが「世界的な和食人気で食材が高騰し、たべにくくなるリスクもある」(中村さん)。

 

今回登録される「和食」は昔ながらの「一汁三菜」。ブームに浮かれることなく、次代に引き継ぐ食文化を正しく見つめる役目が京都にはある』

 

2013年11月15日の新聞より